原発の稼働状況〜東日本では「原発ゼロ」続く

福島の今とエネルギーの未来

9基が再稼働するが…

福島第一原発事故前に原発は54基あった。

事故後、東電・東北電が有する原発はすべて停止し、東日本では「原発ゼロ」の状況がすでに9年間継続している。

2012年9月に原子力規制委員会が発足。2013年7月に新規制基準が制定され、電力会社は、原発を再稼働させる場合、新規制基準に基づく原子力規制委員会の審査を受けることとなった。2013年9月関西電力の大飯原発3・4号機が停止して以来、ほぼ2年間、全国の原発が停止し、原発ゼロの期間が続いた。その後、2015年8月、九州電力川内原発3号機(鹿児島県)が再稼働。2020年2月10日現在、規制基準に合格し、再稼働した原発は、川内原発3・4号機、玄海原発3・4号機、伊方原発3号機、大飯原発3・4号機、高浜原発3・4号機の9基。一方で、19基の廃炉が決まった。2019年は再稼働した原発はゼロ。事故前に3割程度あった原発の総発電に占める割合は、2017年でわずか約3%にすぎない。

また、いったん再稼働した川内原発、高浜原発の4基は、テロ対策施設(特定重大事故等対処施設)1の建設の遅れにより、2020年には停止に追い込まれる見込みだ。

定期点検中の伊方原発3号機は、広島高裁による運転差し止め判断で、定期点検が終わっても運転再開できない。

原子力規制委員会が新規制基準に合格したとして許可を出したが、まだ再稼働に至っていない原発は6基。

このうち、日本原電東海第二原発(茨城県)では、地元同意のめどがたっていない。東電柏崎刈羽原発(新潟県)の6・7号機では、再稼働のための安全対策費が1兆1,690億円とふくれあがった。同原発に関しては、新潟県が、「福島第一原発の事故原因」、「原発事故が健康と生活に及ぼす影響」、「万一原発事故が起こった場合の安全な避難方法」の3つの検証を行っているところだ。新潟県は、これが終わらない限り、柏崎刈羽原発の再稼働に向けた議論は行わないとしている。

被災した女川原発2号機が、合格へ〜石巻市民が地元同意の差し止め請求

東北電力女川原発2号機(宮城県)は、2019年12月、原子力規制委員会の審査書案が示され、2020年2月26日にも「合格」するとみられている。今後、工事計画認可や安全対策工事、地元同意取得といったハードルがある。再稼働すれば、東日本初となる。

女川原発は東日本大震災当時、高さ約13メートルの津波や激しい揺れに襲われた。5回線ある外部電源のうち1回線が生き残り、かろうじて外部電源が保たれた。損傷を受けた施設や機器も多い。原子炉建屋の耐震壁に1,130箇所のひび割れが確認され、東北電力は建屋の剛性(変形のしづらさ)が最大70%低下していると報告。しかし、被災した施設や機器の補修やその効果についての検証は、審査書案には記載されていない。

県内では再稼働反対の世論が根強い。2017年8月、河北新報社が行った世論調査では、女川原発2号機の再稼働について「反対」「どちらかといえば反対」を合わせた反対意見は68.6%に上った。

2019年2月、「女川原発再稼働の是非をみんなで決める県民投票を実現する会」は、再稼働の賛否を問う県民投票条例の制定を求める署名約11万筆を県議会に提出。しかし、3月に否決された。

2019年11月、女川原発の30km圏内に住む石巻市の住民17人は、重大事故を想定して石巻市などが策定した広域避難計画には実効性がないとして、再稼働に向けた地元同意の差し止めを宮城県と石巻市に求める仮処分を仙台地裁に申し立てた。


  1. テロ対策施設は新規制基準に含まれており、本来であれば再稼働前に建設されるべきものであるが、 「工事計画認可後 5 年以内に設置すること」と猶予されていた。
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