老朽&被災原発を動かす理由は?
原子力規制委員会は、2018年9月、日本原電・東海第二原発が新規制基準に適合しているとし、設置変更許可を出した。また、10月には工事計画認可を、11月には40年以上の運転を認める運転延長認可を出した。今後の焦点は「地元同意」に移った。日本原電は再稼働前に、立地の東海村のみならず、周辺5市の事前同意を取得しなければならないからだ。
東海第二原発は運転開始から40年以上経つ老朽原発だ。交換できる箇所を交換したとしても老朽化に伴い危険は増大する。40年以上の原発は、よほどのことがない限り動かさないという「40年ルール」はいつの間にか骨抜きになってしまった。
東海第二原発は、東日本大震災で被災した。津波により外部電源を喪失して3日以上経って、かろうじて冷温停止し、それ以来停止したままである。地震によってどのような被害をうけているのか、すべてが確認できているわけではない。
東日本では3・11後、原発は一基も動いていないが、電力供給は安定している。2018年、記録的な猛暑に見舞われたが、節電要請はだされなかった。30km圏内には約96万人が居住する。危険な老朽・被災原発を動かす理由はみあたらない。
懸念だらけの安全対策
安全対策には多くの懸念がある。以下はその一部である。
- 全長約1,400kmのケーブルのうち、「難燃ケーブル」もしくは「今後難燃ケーブルに取り換える」ものは一部だけである。
- 東海第二原発の格納容器はMARKII型である。万が一の事故で炉心溶融が発生した場合、水蒸気爆発の危険性がある。しかし、審査では無視してよいとされ、そのリスクが検討されていない。
- 赤城山噴火時においては、最大で50cmもの火山灰が降下する。原子炉建屋の強度不足や非常用発電ディーゼルの目詰まりなども懸念される。
- 緊急時対策所は、免震構造になっていない。
- 近隣には高レベル放射性廃液などを貯蔵する東海再処理施設(現在、廃炉作業中)があるが、万が一東海第二原発で事故が生じたときの対応が検討されていない。
発電量ゼロなのに? 東電などから巨額の「電気料金」
日本原電は、原子力発電専門の発電会社で、東海原発、東海第二、敦賀原発1号機、2号機を所有する。しかし、東海原発、敦賀1号機は廃炉が決定し、敦賀原発2号機も直下に活断層が認定された。
2012年以降、発電量はゼロにもかかわらず、東京電力、関西電力、中部電力、北陸電力、東北電力から、毎年1,000億円以上の電気料金収入を得て、延命している。その額は、総額8,442億円にものぼる(2012〜2018年度)。すなわち、日本原電の延命のための資金を、日本原電から1Whも買っていない全国の電力ユーザーが負担している状況だ。なかでも最も高額の基本料金を支払っているのは東電であり、その金額は2011年度〜2018年度は累計3,713億円にものぼる。
図1 各社から日本原電への電気料金の推移
東電などが再稼働の資金支援を決定
東海第二原発の再稼働のためには、防潮堤などの安全対策工事のために約2,500億円およびテロ対策などに1,000億円程度、合計約3,500億円の費用がかかると見積もられている1。
日本原電の財政状況では銀行からの借り入れもできない状況だ。このため、日本原電は東京電力、東北電力などに資金支援を要請。
2019年10月、東電は、約2,200億円におよぶ資金支援を発表した。また、東北電力、中部電力、北陸電力、関西電力も資金支援に参加する見通しで、大手電力からの支援額は総額3,500億円となる。東電、東北電は、融資や原電の借り入れに対する債務保証の形で支援するという。東京電力には多額の公的資金や電気料金が注入されており、本来、賠償や廃炉に全力を注がなければならないはずである。東海第二原発の再稼働のために資金支援を行うことは論外である。
日本原電は、敦賀原発1・2号機、東海第二原発が動いていた2003〜2010年の純利益の平均は17億円で、東日本大震災以降2011年〜2018年は平均年17億円の赤字2。たとえ震災前の経営状況に戻せたとしても、安全対策費3,500億円を稼ぎ出すには200年程度かかる。一方、東海第二原発が稼働できる年数はせいぜいあと18年であることを考えれば、再稼働判断には経済合理性のかけらもない。
- 安全対策工事について、日本原電は当初約 1,740 億円としていたが、ゼネコンはそれをはるかに超える見積もりを出した。
- 日本原電の有価証券報告書による。